#6

 「はい、ホースランド結(むすび)です!」

受話器の向こうから明るい声が聞こえた瞬間、政子は息を呑んだ。

思わず一瞬の沈黙が流れる。


「あ、もしもし…あの、そ、ソフト競馬についてお伺いしたいんですけれど…」

緊張を隠し切れない声で、政子は自分の要件を伝える。

すると、クラブのスタッフは親切に説明を始めてくれた。

「もちろんです!初心者でも気軽に楽しんでいただけますよ。
まずは見学から始められる方が多いです。ご興味があれば、ぜひお越しください!」


政子はスタッフの温かい対応にほっと胸をなで下ろした。

そして、次に口を開いたときには、少しだけ自信が戻ってきていた。

「それでは、見学をお願いしたいのですが、週末の予約はまだ可能でしょうか?」

「はい、大丈夫ですよ。お名前とご連絡先をお伺いしてもよろしいですか?」


電話を切る頃には、政子の心はもう次のステップへ進む準備ができていた。

夢に向かって一歩を踏み出した実感が、彼女の胸にじんわりと広がっていった。


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#1

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