5月の最終週、富士山が青空に映える晴れた日曜日。
御殿場馬術競技場は澄み渡る空気と共に緊張感に包まれていた。
政子は愛馬ウイニーと共に<富士山ダービー>のゲートゾーンに向かい、その瞬間の重みを噛みしめていた。
「ここまで来たんだ、私…」
緊張で必要以上に手綱を強く握っていた。
その事に気付き、震える心を抑えながら、彼女はウイニーのたてがみを優しく撫でる。
ウイニーが「ふるる」と息をつく。
「いくよ、ウイニー」
政子は脚の合図でウイニーをゲートゾーンに促した。
遠くで聞こえていた観客の静かなざわめきが次第に聞こえなくなるのが分かった。
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